
<浜中町役場>
5月20日(水)・21日(木)、HOKKAIDOしっぽの会は、道東の浜中町・厚岸町において野犬の現地視察と、役場との意見交換を行いました。
初日は雨が降り肌寒い気候でしたが、地元ボランティアの皆さんが同行してくださり、昨年8月以来となる視察を実施することができました。

遠くには、浜中町を代表する景勝地・霧多布半島の西端「アゼチの岬」が霞んで見え、長沼町から330km、車で4時間半という北海道の広大さを改めて実感しました。
この広大な土地での野犬問題は、決して簡単に解決できるものではありません。
しかし今回の視察では、地元ボランティアさんのお力添えにより、情報共有や認識のすり合わせ、協力体制の確認など、大きな成果が得られました。

浜中町役場のご案内で、ゴミ処理場のリサイクルセンターを視察しました。
ここは3度目の訪問ですが、現在も3〜4頭の野犬が3〜4グループに分かれて定着しており、時に群れ同士の争いも起きているとのこと。
廃棄物を食べて生き延びている一方、最近は別の地域へ移動する個体も増え、生息域が広がっているという新たな課題も確認されました。

視察中には、昨夏に見かけた仔犬に似た若いオス犬の姿もあり、右後肢をかばいながら走り去る様子に胸が締めつけられる思いでした。

また、過去に使用されていた捕獲檻も残されており、リサイクルセンター職員さんが不憫に思った仔犬を自宅で保護し譲渡してきたというエピソードも伺いました。
野犬の捕獲後の行き先に悩み、翻弄され、疲弊してきた現場の苦悩が伝わってきました。
その後、浜中町役場に戻り、地元の愛護団体しおんの会さま、ポラリスさま、獣医師さま、山の犬達さま、地元ボランティアの皆さま、そして当会の計8名で、浜中町における野犬の現状について意見交換を行いました。
【浜中町役場との意見交換】
狂犬病予防、不妊去勢支援、保護団体との連携、今後の施設整備などについて協議した。
行政単独での野犬・保護犬対策には限界があり、民間団体との連携が不可欠であるとの認識が共有された。
狂犬病は犬だけでなく哺乳類全般が感染対象であり、予防体制の重要性も確認された。
浜中町リサイクルセンター周辺では3〜4群の野犬が存在するとみられるが、大規模な群れ行動は確認されていない。
不妊去勢後の譲渡が必要である点は一致しており、保護団体側の受入れが飽和状態に近いことから、地域全体で負担を分散する必要性が指摘された。
古い建物を活用した一時飼養施設の整備も議論された。
行政対応としては、捕獲後は保健所へ搬送する方向性が強まっている一方、保護団体が不妊手術を行い譲渡につなげる仕組みも検討課題となった。
浜中町では不妊去勢助成制度があり、令和7年度は犬猫計64頭に助成を実施した。
今後は単年度ではなく継続的に運営できる体制づくりが必要で、協議会方式や責任主体の明確化が求められた。
譲渡・飼養・リハビリが可能な施設整備、ボランティアが活動しやすい拠点づくり、民間主体の委託方式、ふるさと納税の活用なども提案された。

5月21日(木)は、厚岸町の野犬の現状を確認するため、厚岸町役場に集合し、地元ボランティアの皆さんと合流しました。
4名の厚岸町役場職員さまが案内してくださり、計10名で視察を行いました。

最初に向かったのは、床潭地区にある犬の収容場所です。

収容場所では、実際事故も起きていることから安全対策について熱い意見が交わされました。
ここ床潭は漁業地帯で、野犬の群れがいくつかあり、捕獲が進んだこともあり現在数は少なくなっています。
ここでは過去に事故も起きており、安全対策について活発な意見交換が行われました。

床潭は漁業地帯で、かつて複数の野犬の群れが存在していましたが、捕獲が進んだことで現在は数が減っているとのことです。
しかし、野犬は想定外の動きをするため、窓や扉の構造ひとつにも注意が必要で、現場での危険性を改めて実感しました。

続いて、酪農地帯に出没している野犬の状況を確認しました。
4〜5頭のグループが4〜5つ存在しているとされ、その中には当会が5月に厚岸町役場から保護した仔犬のきょうだいがいる可能性があるとのこと。
取りこぼしがあったと考えられ、胸が痛む場面でした。

この日は大勢での視察だったため、犬たちの姿は確認できませんでしたが、普段は4〜5頭が走り回っているとのこと。
ある牧場の従業員の方は、これまで多くの子犬を保護し譲渡してきたと話してくださり、地域で奮闘する方々の存在に励まされました。

設置されていた捕獲檻には、過去に入った犬が破損させた跡が残っており、現場の厳しさを物語っていました。

13時からは、当会2名に加え、ポラリスはまなか様、しおんの会様、厚岸町のボランティア3名、山の犬達様、釧路のボランティア2名、そして役場職員4名の計14名で意見交換を実施。
厚岸町における野犬の現状、課題、そして今後の連携について、率直で有意義な議論が交わされました。
【厚岸町役場との意見交換】
野犬・保護犬猫対策における行政と民間の連携強化、施設整備、財源確保などについて幅広く意見交換を行った。
行政単独では限界があり、民間主体の仕組みづくりや継続的な運営体制の構築が必要との認識で一致した。
クラウドファンディングやふるさと納税の活用、当会の不妊手術の助成金との連携による資金確保も検討課題となった。
対象動物は犬だけでなく猫も含まれるため、双方に対応できる体制が求められ、不妊去勢の徹底が重要とされた。
近隣自治体では野犬群の存在や施設不足が報告され、床潭地区では住民理解が進むなど地域差も共有された。
浜中町・厚岸町ではリサイクルセンター周辺や牧場地帯で野犬が継続的に確認され、住民からは子どもの生活圏への出没や農家からの相談が寄せられている。
捕獲器不足や管理負担、行政の情報把握の限界も課題として挙げられた。
令和7年度の捕獲実績はボランティア69頭、行政28頭と、ボランティアの貢献が大きい一方、保健所の受入能力不足が顕在化している。
行政はこれまでボランティアに依存してきた面があり、今後は人材支援・資材提供・予算措置など具体的な支援が必要とされた。
施設整備では、一時保管施設や社会化・譲渡準備ができる拠点、終生飼養も視野に入れた広域的な施設の必要性が議論された。
犬のTNRは法制度上困難であり、給餌行為の責任についても注意喚起が行われた。
今後は、施設候補地の選定、補助金制度の整理、情報発信強化、行政とボランティアの連携強化などを進める方針が確認された。

その後、私たちは急ぎ足で釧路総合振興局へ移動し、意見交換の場に臨みました。
会議には、振興局から4名のご担当者、浜中町の獣医師の先生、山の犬達さま、地元ボランティアさま、そして当会2名の計9名が参加。道東地域における野犬問題と保護犬の受入体制について、現場の実情を踏まえた率直な意見交換が行われました。
行政・獣医師・地域ボランティア・保護団体が一堂に会し、それぞれが抱える課題や限界、そして今後の連携のあり方について共有できたことは、大きな一歩だったと感じています。
現場の声を行政に直接届けられたこと、そして行政側も真摯に耳を傾けてくださったことは、今後の仕組みづくりに向けて大きな意味を持つ時間となりました。

【釧路総合振興局との意見交換】
道東地域の野犬対策と保護犬受入体制について、釧路総合振興局・保護団体・獣医師らが意見交換を行った。
振興局は今年度、保護犬の社会化と譲渡促進を目的とした委託事業を開始予定で、預かり先でのトレーニングを進める仕組みを準備している。
道東では令和7年度の捕獲頭数が172頭と高止まりし、道内全体の約半数を占める深刻な状況が報告された。
譲渡希望者は道央圏に比べ少なく、中型犬以上が敬遠される傾向も課題となっている。
HOKKAIDOしっぽの会では譲渡後支援として、しつけ教室やスタッフによる飼育相談などの取り組みが紹介され、譲渡後の定期フォローを実施している。
浜中町ではリサイクルセンター周辺で野犬が継続的に確認され、厚岸町でも山間部から市街地へ犬が移動するなど課題が続く。
待機施設の不足や捕獲器の不足、住民からの不安の声も共有された。
施設整備については、保護・社会化・譲渡準備を行える拠点の必要性が一致し、協議会方式による運営主体の明確化が求められた。
行政施設の活用可能性も議論されたが、条件確認が必要とされた。
ボランティアの負担は大きく、交通費・飼養費・家族の負担など持続性が課題となっている。
野犬増加の背景には餌やりや地域定着、農家跡地の放置などがあり、オホーツク地域や標茶町でも増加傾向が報告された。
今後は地域ごとの実態把握、子犬・成犬双方の捕獲戦略、終生飼養体制の構築、情報発信強化、行政とボランティアの連携強化が必要で、10〜15年単位の長期的取り組みが不可欠と確認された。
以上のとおり、今回の2日間は、熱意あふれるボランティアさんとの出会い、自治体との率直な意識共有、そして振興局との未来を見据えた建設的な話し合いなど、どれも大変貴重で濃い時間となりました。
現場の声と行政の視点が交わり、これからの道東地域の野犬対策に向けて、一歩前に進むための大きな手応えを感じる視察でした。

<出典先:環境省 統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(令和4年〜令和6年)>
道東地区では、野犬の増加が深刻化しています。
野犬同士、あるいは外飼いで未不妊の飼い犬との交配による繁殖など、2024年度には釧路管内で140頭、根室管内で44頭、道東だけで184頭が捕獲されました。
これは北海道全体の約65%を釧路・根室が占めるという、極めて深刻な状況です。
不妊去勢が進まなければ、野犬は増え続け、また新たな命が過酷な環境に置かれてしまいます。
本来であれば、一頭でも多くの犬に不妊手術を施し、適正な飼育のもとで生きていけるようにすることが望ましい。
しかし同時に、「人と動物が共に生きる社会」を目指すうえで、野犬たちが抱える“生きづらさ”をどう解消していくのか──この問いは、私たちが避けて通れない重要なテーマです。
だからこそ、「人が生んだ問題を、人が責任を持って解決する仕組みづくり」を、行政・地域・保護団体が協働して進めていく必要があります。
今回の視察では、当会から「野犬共生センター」構想の必要性についても提案させていただきました。
現場の課題、行政の限界、ボランティアさんの負担など、これまで見えづらかった実情を共有しながら、地域全体で持続可能な仕組みをつくるための一つの方向性としてお伝えしたものです。
これからも、一頭でも多くの命をつなぎ、「人と動物が共生する幸せな社会」を実現するために、HOKKAIDOしっぽの会は歩みを止めず活動を続けてまいります。
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