
駿(しゅん)は、2017年の9月、釧路市内を放浪していたところ保護され
釧路保健所に収容されていたオスのミックス犬で、当会に来て3年弱
推定で15〜18歳になっていました。
誰にでもフレンドリーでお散歩が大好きな甘えん坊でした。
当会来てからの3年弱のうち、丸2年を、優しい預かりボランティアさんのもとで
卒業犬のサルサちゃんと一緒に過ごしました。
以下、預かりボランティアさんからのご報告です。
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駿がうちに来たのは2018年4月30日、いつ病状が変化するかわからない、生い先が知れない、なら満足のいく最期を、と思い、やきとり、ビスケット、しゃぶしゃぶ、ジンギスカン、できる限りの贅沢を叶えてあげてきました。そして2年近くの時が経ち、2020年4月15日、とうとう駿は旅立ちました。
振り返ればあまりにあっという間なのに、まさかこんなにも長いとは。

引き取った時、駿は推定13歳。もともと外犬だったのか、トイレは外でしかしたがらず、しかし足腰はすでに衰えていたので、毎日抱え上げて外へと連れていっていました。うんちもたまに失敗し、踏んだり、上に寝そべっていたり。仕事帰りに、うんちの無事を祈ることも当たり前でした。
舌はずいぶん肥えているようで、並のフードはなかなか食べず、高級なフード、犬用ふりかけやビスケットを砕いて混ぜてみたり、やきとりなどのご馳走でさえ2日も続けば飽きてしまうので、献立のローテーションを考えてみたり。
マイペースなのんびり屋でもあって、特に寝床には頓着がなく、よく妙な寝相で、変な場所で眠っていました。同居犬が阿呆の人咬み犬でもあまり怖がったりせず、拾った仔猫が甘えてきても黙ってされるがままにしていました。

引き取って4か月後、発作を起こして立てなくなり、状態は暗転、もうお別れなのか、と覚悟もしましたが、点滴治療でゆっくりと持ち直し、無事に冬を越え、春、庭先の花畑や桜をバックに記念写真を何度も撮らせてくれました。介護はしんどくても、その合間合間には平穏さがあった気がします。
それでも確実に老いていく駿は、一つまたひとつと、できないことが増えていきます。ホップステップができなくなり、やがて走れなくなり、段差が苦手になって、水を飲むにもバランスを崩すようになっていき、右側に傾くようにぐるぐる歩き、後ろ足にも力が入らなくなって。一人で起き上がれず、「起こして!おしっこ!」と鳴いて呼ぶことも多くなりました。
心臓も腎臓も悪く、通院、内服、点滴が欠かせなくなり、点滴中、恐怖に震える駿を抱きしめては頭をなでて、ごまかしにおやつを噛ませると、駿はやけくそに食べていました。

2度目の冬をとうとう迎えた頃には、もうほぼ寝たきりの状態でした。おもらしをすることが増え、抱きかかえて外へ連れていっても、立っているのもたいへんそうで。それでも前足は動かせたから、リハビリがてらに家の前を、のそのそ散歩していました。
4月に入り、前足にも力が入らなくなりました。全身を抱えての散歩とおしっこは駿も僕らも辛いの一言でしたが、それでも外でおしっこがしたいと、昼も夜もなく鳴いて僕らを起こしていました。食は細くなっていましたが、母の作る湯がいた鶏肉は、一皿ぺろりと食べる元気もあって。僕らは、どことなく思っていました。きっと駿はこれから寝たきりになって、褥瘡ができてたいへんでも、まだまだいっしょにいられると。
4月15日、少し吐いた痕がありましたが、本犬は窓辺の日の当たる場所ですやすやと眠っていました。点滴をして、表情も良かったので、からあげを口に持っていくと2つほど、ゆっくり咀嚼して食べ、水をほんの少し飲んで、また眠っていました。
午後5時頃、突然けいれん発作が始まりました。いくら待っても、いつまでも発作が治まる様子がなく、僕らはただ傍にいて、駿が舌を噛まないようにと首を支え、身体を撫でて、口からもれる泡をぬぐっていました。ただそれだけを続け、絶えず小刻みに震える駿の体を抱き上げて、見守っていました。
午後9時頃、突然に発作が止み、駿は深い深い呼吸を始めました。時々前足を動かして、ぐぅ、と鳴いて。最後に首をぶるぶる、と横に振ってから、にかぁ〜っと笑った後、しっぽを一振り、そして眠るように息を引き取りました。
あと少しで丸2年、長いようで、あっという間に過ぎていった楽しい日々でした。
もう夜中に鳴き声でたたき起こされることもありません。献立に悩むことや、うんちに汚れたマットを洗うのに奮闘することもありません。駿が来てから欠かすことなく毎日、この腕に駿を抱き上げてきました。その重みも、ふさふさした毛も、温もりも、駿のつくため息も、もう二度と感じることはない。
駿のいなくなった部屋の広さに戸惑って、同居犬のサルサも所在なさげにしています。なんだかんだ言っても、サルサが一番、駿の傍にいた気がします。檻越しとはいえ、よく二頭並んで寝ていました。駿に異変があった時には報せに来てもくれていました。駿がご馳走を食べている傍で、文句を言わずに見つめ、じっと我慢していました。人咬みの問題児が、いつの間に他の犬を家族と受け入れていたのかと、今さらながら驚いています。
応援してくださった皆さん、今までありがとうございました。しっぽの会のスタッフ、ボランティアの皆さん、ガイア動物病院のスタッフの皆さん、足長の支援者の皆さんに、駿に代わり、お礼を申し上げます。
駿は、どんな仔犬だったのか。どんな飼い主に拾われて、何を食べて生きてきたのか。どんな名前で呼ばれ、誰に頭を叩かれて、誰にならしっぽを振って。どこでくつろぎ、風を感じ、草花のにおいをかいで。飛び跳ねて散歩を喜び、駆け回って遊び、なぜ捨てられたのか。その瞼の裏に残した記憶は、誰にも語らぬまま。ただ共に生きたこの2年間が、駿にとって、少しでも、しっぽを伸ばして過ごせる日々だったのなら。
駿、ありがとう。
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預かりボランティさん
大きくて温かな愛情いっぱいに駿ちゃんに寄り添ってくださり
駿ちゃんの晩年の2年間は、本当に幸せだったと思います。
サルサちゃんと一緒に、色々なところに連れていってくださったり
我が子以上の愛情をかけてくださったこと
駿ちゃんも、感謝の気持ちいっぱいに、お空へ旅立ったことと思います。
大切に育て、お見送りいただきまして本当にありがとうございました。
ボランティアさんからいただいたお写真いっぱいの過去記事
ご覧ください。
http://shippo-days.seesaa.net/article/462363742.html
皆さまとご一緒に駿の冥福をお祈りしたいと思います。
これまで応援いただいた皆さまにも、心より感謝申し上げます。