2017年01月18日

京都府内の猫切断遺体剖検記録


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江別市の酪農学園大学獣医学群獣医学類感染・病理学分野の浅川満彦教授から、
以下のご投稿をいただきました。

京都府内の小学校の校庭に埋められていた猫下半身の鑑定を警察より依頼され
ゼミの生徒さんが所見をまとめられたそうです。

野生動物医学では死因解析が重要な仕事の一つだそうですが、
死体はほぼ変性しているのでその手法は病理学よりも法医学となると、
浅川教授のfacebookに記載されていました。

猫が殺害されたものなのか、殺傷の証明はされていませんが、
切断部は人為的なものであるそうです。

切断が、猫が生きていたのか死んでいたのかどのような状態で行われたのかについては
現在の獣医学では、法医学的分野が確立されていないため、わからないそうですが
将来的にはそのような分野が設立され、動物虐待の証拠となりえることを
私たちも期待しています。

検体を洗浄したりせず手をかけずにおくと、より多くの証拠や過程が分かるそうですので、
万が一、疑わしい場面に遭遇したら、皆さまにぜひ思い出していただきたく掲載いたします。

なお猫の死体の写真は衝撃が大きいですので、しっぽレポートでは掲載しておりません。
このような痛ましい事件が二度と起きないことを願ってやみません・・・
浅川先生、情報提供をありがとうございました。

浅川満彦教授facebook
https://www.facebook.com/mitsuhiko.asakawa?fref=ts

京都府内の小学校校庭に埋没されていたネコ切断体の一例
吉田圭太1・垣内京香1・金谷麻里杏1・川道美枝子2・浅川満彦1
1酪農学園大学獣医学類 (〒069-8501江別市文京台緑町582)
2関西野生生物研究所 (〒605-0981京都市東山区本町17丁目354)

連絡責任者:浅川満彦 酪農学園大学獣医学群獣医学類感染・病理学分野
〒069-8501江別市文京台緑町582 Email: askam@rakuno.ac.jp

事例概要
2016年10月10日午前10時35分頃、京都府南部某市小学校校庭の築山から動物の脚が露出した状態で埋められていた。第一発見者は、当日開催の地元幼稚園運動会で活動をしていた幼児であった。運動会の終了後、警察に連絡され、回収された。なお、この運動会はこの前日実施予定であったが、雨天のためその日に順延された。同校教頭の証言では同年10月9日夕刻の校庭巡回時には校庭に異常は無かったということであった。
死体を回収した警察署から、今回の著者の一人、川道を通し、切断原因が人為的なもしくは動物によるものかどうかの鑑定依頼を受けた。酪農学園大学野生動物医学センター(以下、WAMC)では、社会貢献の一環として警察から事件に関わると考えられる事案についても依頼されてきたことから(刊行されたものでは、高木・浅川, 2016; 近本・浅川, 2016)、今回も協力をさせて頂いた。

肉眼観察
依頼者によるとWAMCに到着するまで、死体はビニール袋に密閉された状態で約4℃にて冷蔵され(図1)、同年10月13日、WAMC入院・サンプリング室にて検分された。


図1.  WAMC到着時点の試料の状態


外貌および生殖器から剖検対象材料(WAMC登録番号AS 16172)はネコ、雌、若齢、胸椎と腰椎との間で切断された下半身(骨盤、両後肢および尾含む)で、胸部から前半身は欠如していた。脚の部位を除き、土中に埋没されていたということであったが、WAMC送付時の材料に土砂付着が認められなかった。回収直後、水道水などで洗浄されたものと考えられたが、この材料が送られてきたビニール袋および体毛は乾いており、洗浄されたとしても、湿性状態ではなかった。
特徴的な肉眼所見として、概して皮膚および脊椎骨間の離断面は直線的であり、動物による摂食などで生ずる不定形なものではなかった(図2-1および2)また、腰背側体幹筋が直上の皮膚から尾部まで剥皮されていたこと(図2-3)、腹腔内の諸臓器・消化管は子宮および膀胱を除き欠如していたこと、膀胱内に尿貯留が認められなかったこと(図2-4)、子宮に胎盤痕は認められなかったこと、筋肉および残余した子宮・膀胱は新鮮な状態であり、腐敗・変性傾向が示されなかったことなども記録された。
このような死体で一般に認められるとされるハエ類幼虫や血液・消化管内容物など付着なども認められなかったが、これは洗浄により除去された可能性が高かった。


図2.  WAMCに到着した時点の試料

結論
依頼項目の切断が人為的か非人為的については、皮膚・脊椎骨間離断面(創縁あるいは面)の形状が整であることから、明らかに前者であり、特に、用いた器具は鋏や大型の刃物であったと考えられる。この切断がいつ、個体がどのような状態(生きている状態で切断されたのか、それとも死体が切断されたのか、もし、死体だとして切断前あるいは後に冷凍保存されたのかどうか、その場合、死因は何だったのかなど)で行われたかは、法医学的な手法が日本の獣医学で確立されていない現状では答えるのは難しい。
また、法医学の領域では双翅目幼虫の種構成により死後の時間推定に用いられることが普通であるが(千種ら, 2006)、関係者が気の毒に思ったのか洗浄および拭き取りが行われていた。獣医学でも法医学的な分野をしっかりと確立し、それに伴い啓発を行うことで、動物死体を適切に保存することも一般に浸透することになろう。本拙稿がそのような将来の新たな分野設立契機の端緒になれば幸いである。なお、本検体子宮・膀胱・筋肉の一部は、現在、WAMCにて−20℃にて冷凍保存され、もし、必要ならば薬物あるいは疾病などによる死亡原因の解析に備えている。

文献
浅川満彦 2006. 我が国の獣医学にも法医学に相当するような分野が絶対に必要!−鳥騒動の現場から. Zoo and Wildlife News (野生動物医学会ニュースレター),(22): 46ー53.
千種雄一・一杉正仁・黒須 明・木戸雅人・倉橋 弘・林 利彦・金杉隆雄・桐木雅史・加藤尚子・徳留省悟・松田 肇. 2006.法医解剖で検出された双翅目昆虫について. 衛生動物, 57: 136.
近本翔太・浅川満彦, 2017. 酪農学園大学野生動物医学センターWAMCに依頼された車輌付着の獣類体毛鑑定と示唆された野生動物交通事故に関わる問題点. 第16回「野生動物と交通」研究発表会発表論文集,エコネットワーク,札幌:印刷中.
高木佑基・浅川満彦. 2016. 獣毛鑑定の一例. 森林保護(341): 6-7.

posted by しっぽの会 at 11:19 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする