2015年03月04日

悲惨で残酷な現場 旭川市「あにまある」の多頭飼育放棄

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旭川市内の多頭飼育の飼い主が放棄したミックス犬のメス6匹。

昨日、旭川市動物愛護センター「あにまある」では、
先日調査に入った飼い主より、初回、メス犬6匹を引き取りました。




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2月23日、旭川市内の多頭飼育現場へ向かうため重装備をされる「あにまある」職員の皆様。

防護服はサーズ(SARS)対策に用意されたものだそうです。





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車で15分くらい走ったでしょうか・・・その現場は郊外の住宅地にありました。





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家には相当数の犬がいるとのこと。
この時点では、雌雄の頭数を把握するための調査が目的でした。

犬が飛び出すと大変なので、やっと入った室内ですが、
家という概念は全くなくなってしまいました。





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まずは雌雄の数と個体確認のため、手早く犬を捕まえる職員様。

2人1組になって、次々と捕まえますが、何しろ凄い数ですから、
汗だくになりながらの息を切らしての必死の作業でした。





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ナイロン紐を首に結び、オスは緑、メスは赤のビニールテープをつけていきました。





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紐を切って素早くテープをつけれるよう準備、手帳に雌雄を正の字でメモしていきました。

私たちも、足手まといにならぬよう必死でお手伝いさせていただきました。




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犬たちは人に慣れてはいますが、混沌とした状況にパニック状態になり、
捕まらない子は針金を輪にして捕まえたり、職員の方も必死です!





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中には捕獲時に軽く気を失った犬もいました。

しかし、現状把握は解決の第一歩です。




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押入れ?もう元が何だったのか分からない室内・・・
これが現実なのか夢なのか・・・ここに少なくとも10匹はいました。

飼い主もいったい何匹いるのか分からないとのこと。
結局、50匹近い数の犬がいることが分かりました!


平成20年頃、飼い主は1匹の犬を飼育していましたが、
近所に捨てられたメス犬も飼い始め、
不妊手術をしなかったために、6年間でこれだけの数になったとのこと!

実際は相当数、犬同士の争いや弱肉強食の生存競争で死んでいったようです・・・





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この日、「あにまある」は推定2〜3ヵ月の4匹、子犬と思われたけれど実は成犬だった2匹、
産まれて10日ほどの子犬を保護しました。





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生後10日のメスの子犬・・・おそらくこの子一匹だけ、かろうじて生き残ったのでしょう・・・

子犬に定期的な授乳をするのは大変なので、当会で引き取りさせていただきました。





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台所?にのぼって来たオス犬は、身体の成長具合から子犬と思いましたが、
歯が汚く歯石もついているし、永久歯もあり未熟の成犬だったようです。

成長期に十分な栄養が取れない弱い犬が生き延びれたのは、奇跡的なことでしょう!





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押入れだったと思われる室内は糞尿が堆積し、まるで田んぼのぬかるみのような状態です。

そんな中、洗濯機や冷蔵庫、テレビなどの家電があるのが、もの凄く違和感を覚えました。





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当然ですが、臭いも強烈なアンモニア臭がして、夏場、締めきった室内で
人も犬もすし詰めに生活していることが信じられず、未だに夢か幻だったのかと思う光景でした。





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こうした衝撃の現場は言葉を失い、思考能力を混乱させます。

こんなことがあってはならない!
しかし、飼い主は犬が大好きと言っている・・・
外で出会えばどこにでもいる一見普通の人です。

感覚が完全にズレている・・・
この変な違和感が消化できず、ずっと虚無感や悲壮感が残っています・・・





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三間続きの室内で、50匹はいる犬たちと生活した飼い主・・・

不衛生な環境は、犬たちだけでなく飼い主の健康と精神を蝕みます。
こうした感覚に麻痺していくのでしょうか・・・本当に分かりません。

理解することは到底不可能ですが、こうなる前に何とかならないものか・・・

行政、民間の多くの監視の目が大切であると痛感しました。





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飼い主は、具合の悪い犬を心配そうにタオルで包みずっと抱いていましたが、
床に置いた瞬間には踏んで行く犬もいて、ここではどこにも安息の場所はありません・・・

虫の息だったこの子は、その後亡くなったそうです・・・

今はただ安らかに眠ってと、冥福を祈りたいと思います・・・





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もう一匹の子犬と思われた白いミックス犬も、同じく未熟な成犬でした・・・

子犬が実は成犬だったという事例は初めてだったのでもの凄い衝撃でした。

ただ、犬たちは同じ空間に飼い主と生活をともにしていたので、
人に慣れていることだけが不幸中の幸いでした。


犬や猫の多頭飼育に起因する騒音や悪臭、毛の飛散といった問題は、
行政機関にも様々な苦情が寄せられています。

札幌市でも、最近では平成26年1月〜2月にかけて多頭飼育で放棄された98頭の猫をはじめ、
最近では、白老町でも飼い主が死亡後に飼い猫の多頭飼育が明るみになりました。

犬・猫を多頭飼いする無責任な飼い主による放棄の事例が多くみられ、
行政やボランティアの団体や個人がその対応に追われる事態が続いています。

多頭飼育において適切な管理を怠ることは、地域住民等、周囲への迷惑や生活環境への被害、
十分に世話が出来ず健康管理が出来ないなど動物虐待にもつながります。

しかし現状では、犬や猫の多頭飼育を事前に把握する方法がなく、
周囲の住民からの苦情によって判明するなど、
対策が後手に回り未然に防止できない状況となっています。

札幌市では、来秋『(仮)札幌市動物愛護と管理に関する条例』が制定される予定ですが、
多頭飼育の届出制も条例に加わることになるようです!

多頭飼育の問題は、飼い主本人に罪の意識が薄く、本人は動物好きと豪語します。
しかし、最初に動物に不妊処置をすることを怠ったために、数年で何倍もの頭数になり、
手が付けられなくなって、共食いや弱い個体や子犬は殺されるなど地獄絵図となります。

動物の管理能力のない者が、自然に任せて生活することは、
それだけでも動物虐待になることを意識すべきですが、
本人にはそうした意識など毛頭ないようで、
この日も悲壮感と虚無感でいっぱいになりました。

北海道にも、『多頭飼育の届出の条例』を制定すれば、
行政が多頭飼育を事前に把握出来れば、それに起因する迷惑や問題を防止し、
飼い主の適正に飼育できる数を超えた多頭飼育を抑止し、
多頭飼育崩壊を予防する効果が期待できます。

特に多頭飼育の場合は、飼い主の死亡や入院、
環境悪化のため日常生活が正常に送れなくなってからの発見や相談では遅く、
多頭飼育の届出をすることは、動物はもとより飼い主自身の早期救済にもなります。

また、犬については飼い主の義務である狂犬病予防法に基づく登録と
予防接種を促すことが出来る他、飼養動物に不妊・去勢手術の実施を促すことで、
繁殖制限させることが出来、適正飼養につながります。

飼い主本人には、適正飼育や管理能力がないことが多いので、
地域住民が異常に気付いたらすぐに行政に通報し、
多頭飼育の現場を行政の監視下に置き、早めに対応することは必要だと痛感しました。

不幸な動物を生み出すのは人間のエゴです。
でも、守ってあげることが出来るのも人間です。


旭川市動物愛護センター「あにまある」では、普段は犬の迷子・放棄の収容は10匹程で推移、
2012年9月に郊外から市の中心部に移転してから、犬の殺処分ゼロを更新している、
全国でも優秀な動物愛護センターです。

今後、数回に分けて多頭飼育現場から犬を引き取る予定ですが、
職員の皆様は、「出来たら殺処分はしたくない。」と思いを強くされています。

旭川動物愛護センター「あにまある」様、
不幸な犬たちのためにご尽力くださり、本当にありがとうございます!

一匹でも家族になれますよう、どうか皆様のご協力をお願いいたします!

情報の拡散、シェアのご協力もよろしくお願いいたします!



posted by しっぽの会 at 00:11 | 北海道立、市立保健所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする