10月31日(土)に開催いたしました
札幌市共催第3回しっぽの会公開講座のご報告をさせていただきます。
講師には、朝日新聞社メディアラボ主査の太田匡彦氏をお招きいたしました。
太田先生は、ペットビジネスに関する犬猫の問題を語ってくださいました。
太田氏は2010年、「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」を朝日新聞出版より
出版されていますが、ペットのビジネスモデルを変えなければ、
犠牲になるペットたちは後を絶たないし、
今、CMや動画で猫が大人気ですが、一昔前にチワワがCMで流行り、
その後、放棄されたり遺棄されたように、流行の二の舞になるのではと危惧されていました。
今回、資料のタイトルに
【売られる命の現実〜「殺処分ゼロ」を超えて〜】と示されました。
良く言われている「殺処分ゼロを目指して」ではなく
そこを超えなければならないと言うことを冒頭でおっしゃっていました。
2013年改正動物愛護法以前、もともとは業者が育て、繁殖等で使い古した生体を
自治体で引き取り、処分していたのが、改正法により引き取らなくなりました。
業者には、当たり前のことなのですが生体の終生飼養の確保がやっと義務付けられました。
以前は殺処分ゼロと言えば、業者が自治体へ引き取らせた犬猫の数も含まれていましたが
改正法後は、「殺処分ゼロ」とは行政、この場合札幌市が殺処分ゼロにするだけであり
それはそれでとても大切だけれども、業者のもとで闇から闇へ葬られる犬猫は含まれない、
今「殺処分ゼロ」だけを言いすぎると、業者によって不幸な環境におかれている犬猫が
全く救われない、目がいかなくなるのが問題だと言うことを強調しておられました。
会場のWEST19には、約150人の方が太田先生の講座を聴きにいらしてくださり、
はるばる遠方より飛行機でお見えになられた方もいらっしゃいました!
太田匡彦先生のプロフィールです。
1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。
読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。
経済部記者として流通業界などの取材を担当。
AERA編集部記者を経て14年からメディアラボ主査。
著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)がある。
『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』は2010年9月刊行され、その後単行本が出版されました。
太田先生は2001年朝日新聞社に入社され、経済部記者として流通業界を取材、
2007年9月AERAの編集部員となり、犬の流通について調査され、
透明性がない特殊な業態であることに疑問を抱かれました。
太田先生が書かれた雑誌AERAの記事も、ご来場の皆さまにご覧いただきました。
太田先生は、今月10日刊行「動物のいのちを考える」で、ペットの売買について共著されています。
「本書は現代日本社会で人と動物のあいだに見られるさまざまな問題を、
あくまでも事実を通して考えている。」とのことですから、命を考える1冊となっています。
動物のいのちを考える
http://www.sakuhokusha.co.jp/book/doubutsu.html
コチラからお求めいただけます。
http://www.sakuhokusha.co.jp/book/order/order.htm
また紀伊國屋書店等大型書店でも取り扱っているそうです。
講座はたっぷり2時間、資料とパワーポイントを見ながら進められました。
2008年夏、犬の殺処分を巡る問題の取材を始めた太田先生は、
どこか構造的な問題があるのではないかと、
7年程前は報道事例もない中、1から取材を始められましたが、
まず手掛けたのが全国の主要な自治体に「犬の引取申請書」の情報公開請求を行い、
並行して動物愛護団体からも多くの情報提供をいただいたそうです。
そして、ペットショップや繁殖業者から不要と自治体に放棄された犬猫の現状を知り、
明らかになったのが犬の流通システムに潜む深い闇でした。
太田先生は、現状とこれから私たちにできることをお話しくださいました。
環境省は悪質業者の排除に向けて「繁殖制限」と「飼養施設規制」に乗り出すと、
時事通信が10月24日に報じました。
朝日新聞社「sippo」太田先生記事
第10回 環境省が「繁殖制限」「飼養施設規制」導入へ 問題山積の生体販売「適正化」に大きな一手
http://sippolife.jp/column/2015102600003.html
そして、「8週齢規制」の実現が最重要課題です。
8週齢規制とは、生まれた子犬や子猫は親元で生後56日迄は引き離さないというもので、
子犬や子猫が親や兄弟と最低8週間一緒に過ごすことで、社会性を身に着け、
様々なダメージを回避するための規制ですが、
2013年改正の動物愛護管理法では見送られ実現しませんでした。
朝日新聞社「sippo」太田先生記事
第1回 成果多い改正動愛法 消費者も賢くなろう
http://sippolife.jp/column/2015050100023.html
消費者、飼い主が賢くなれば、社会全体が変わります。
太田先生は車の販売や不動産に例えられて、分かりやすく説明くださいましたが、
車のディーラーに行って車を衝動買いする人は滅多にいないと思います。
家族に合った大きさや用途、燃費や維持費、将来の予想図等考えて
新車であったり中古車であったり、
ニーズに合わせて慎重に車を購入されると思います。
本来ならペットもそう言った判断基準のもと選べば、
安易に飼って(買って)安易に捨てることはなくなります。
2013年改正された動物愛護管理法は、終生飼養が義務付けられましたが、
5年後の2018年の改正時には、ぜひ8週齢規制が設けられるよう今から運動が必要です。
講演後には、会場の皆さまからの質問も受け付け
「パピーミルで生産された犬にも血統書は発行されるのか」
「生体展示販売している企業にお金を落とさないために、適切な行動は」
「なかなかペットショップの廃業に繋がらないのは、それだけの儲けがあるのか」
などの疑問にもお答えいただきました。
たくさんの良いご質問をいただいたにもかかわらず、
お時間の関係で全てご紹介できず申し訳ありませんでした。
太田先生が、編集されている朝日新聞社さまのペットウェブメディア「sippo」から、
記事を掲載させていただきました。
太田先生は、朝日新聞本紙朝刊では、
隔月ペットを巡る諸問題について記事を書かれていますが、
タブロイド紙も関東圏で配布されて
ペットと暮らす幸せや社会問題など発信していらっしゃいます。
sippo
http://sippolife.jp/
札幌市からは、札幌市の犬猫の現状や
現在意見を募集している「動物の愛護及び管理に関する条例(案)」についての意見募集の
お知らせがありました。
札幌市の動物愛護、福祉を担う大切な条例の概要ですので、ぜひご参加ください☆
詳しくは以下のしっぽレポートをご覧ください★
(10/28)札幌市にて動物の愛護及び管理に関する条例(案)についての意見募集中!
http://shippo-days.seesaa.net/article/428658912.html
札幌市と北海道の第一種動物取扱業者の名簿も展示しました。
環境省によると、
「第一種動物取扱業者は命あるものである動物を扱うプロとして、
より適正な取り扱いが求められます。」
規制を受ける業種は、実験動物・産業動物を除く、哺乳類、鳥類、爬虫類の販売、
保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で行う場合は、
営業を始めるに当たって登録をしなくてはなりません。
代理販売やペットシッター、出張訓練などのように、動物または飼養施設がない場合も、
規制の対象になります。
また、第一種動物取扱業者のうち、犬又は猫の販売や販売のための繁殖を行う者については、
「犬猫等販売業者」として犬猫健康安全計画の策定とその遵守、
獣医師との連携の確保など追加の義務が課せられます。
必要に応じて自治体の担当者が立入検査を行い、
守るべき基準が守られていない場合などには、知事が改善の勧告や命令を行い、
悪質な業者には、登録の取消や業務停止命令が行われることがあります。
また、登録せずに営業した場合や改善命令や業務停止命令に従わなかった場合は、
100万円以下の罰金に処せられます。
その他、登録内容の変更を届け出なかったり、虚偽の報告をした場合は、
30万円以下の罰金に処せられます。
当会も昨年2014年度から非営利の保護活動の他、
飼い主さまからの預かりの業務も行っているため、名簿に登録されています。
自治体は、適切に動物が管理されているか、常に目を光らせて、
抜き打ちで立入検査を行うことが有効だと思いますし、
事実、先日出席しました当会のある長沼町も管轄する空知総合振興局の
「平成27年度動物取扱責任者研修」でも、
担当の職員の方が、「連絡なしでお邪魔します」と仰ってました。
太田先生の11月1日付の新しい記事にも、
第一種動物取扱業者に関する以下の記事が掲載されています。
第11回 来年度も流通量の集計を実数把握で「闇」減らせ
http://sippolife.jp/column/2015102900005.html
もしお近くに繁殖や販売等されている方で(個人であっても)、
日付現在で名簿にない場合は違法ですので管轄の自治体にお知らせください。
どちらも札幌市動物管理センター、北海道のHPから閲覧できます。
札幌市第一種動物取扱業者登録簿(平成27年10月15日現在)
http://www.city.sapporo.jp/inuneko/main/documents/toriatukaih2710.pdf
北海道第一種動物取扱業者登録簿(平成27年6月30日現在。札幌市を除く全道分)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/doubutuaigo/gyousha-list270630.pdf
札幌市展示は、飼い主募集の猫たちの写真等展示されました。
当会は、平成26年度の北海道全体の犬猫の収容状況、処分状況や動物愛護管理法、
ペットを飼う前に、地域猫・TNR等、殺処分減少や現状解決の方法等、ご覧いただきました。
<画面クリックで大きな画面>
昨日の北海道新聞夕刊誌面に、
2014年に埼玉県などで犬が大量に遺棄された問題に触れ、
「ペットショップや繁殖業者などによる『大量生産、大量販売、大量遺棄』の
ビジネスモデルによって、多くの犬や猫が見殺しにされている」と指摘。
こうしたビジネスモデルを変える法規制の必要性や自治体による業者への監視指導の徹底を訴えた。
と公開講座の記事が掲載されていました!
久保田昌子記者さま、取材くださりありがとうございました!
当会の飼い主さまを募集している犬猫のプロフィールや
出会いがあって幸せに暮らしている卒業ワンニャン、
保護時とその後の様子を収めたビフォーアフター等も展示しました。
多くの皆さまが興味深くご覧くださいました。
<太田先生と当会 稲垣代表>
太田先生の著書を拝読してから、5年。
こうして太田先生に講演いただけたこと、大変嬉しく夢のようです。
2013年、動物愛護管理法が画期的に改正されたのも、太田先生のお力が大きいと確信しております。
受付や会場整理、資料の配布や集計等、ボランティアさんの力は絶大で、
いつも助けていただいています。
気を利かせて先先に作業をしてくださったり、あうんの呼吸で動いてくださっています。
いつも本当にありがとうございます!
今回は犬と猫に関するアンケートの他にペットビジネスに関するアンケートも
実施させていただきました。
どちらも100名を超える皆さまが、質問事項も多い中、真剣にご回答くださいました。
保健所で動物管理の仕事をされている職員の方が日々悩まれていることや、
偶然当会を知られ、今回の講座でペット流通や生体販売への疑問を抱かれ
意見を記載してくださる方等、ペットに関する高い意識を感じました。
第3回札幌市共催しっぽの会公開講座
殺処分ゼロをめざす「犬を殺すのは誰か〜ペット流通の闇」は無事に終了いたしました。
ご来場くださった皆さま、札幌市動物管理センターさま、北海道新聞社さま、
ボランティアの皆さま、本当にありがとうございました!
第4回公開講座の講師は未定ですが、太田先生のおっしゃっていた
「保護してるだけでは問題解決にならない。愛護団体が無くなるのが目標」と言う言葉をかみしめ
これからもためになる知識や情報を皆さまにお伝えしてまいります!
次回もどうぞお楽しみに!!