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本日の北海道新聞社会面に、
先月25日に亡くなった円山動物園のマレーグマのウッチ―の記事が掲載されていました。
ウッチ―は推定30歳以上のメスで、昭和62年から円山動物園で飼育されていましたが、
人間にすると60〜80歳と日本で最高齢のマレーグマでした。

<8月3日撮影 写っているのはウメキチかハッピーのどちらかです>
マレーグマは、東南アジアの熱帯雨林に生息するクマの仲間の中で最も小さい種類で、
生息環境の悪化で数が減っている、IUCN国際自然保護連合のレッドリストで
絶滅危惧種に該当する、日本ではオス14頭、メス14頭が飼育されている希少な動物です。
長きに亘り、動物園の限られた空間の環境下で、生涯を終えたウッチ―。
その最期が天寿を全うするのではなく、
若いオスのマレーグマに襲われたことによる事故死であったことは
既にご存じの方も多いと思います。
北海道新聞の記事によりますと、
この度、札幌市は動物愛護管理法に基づき、円山動物園を立ち入り検査し、
検査は4日札幌市動物管理センター向井所長ら3人が実施しました。

先日、当会も視察に行って来ましたが、ウッチ―の献花台は動物園センターに設置され、
たくさんのお花や果物、蜂蜜などがお供えされていました。
動物たちに健康と安全な環境を与えることは、動物園側の責任です。
動物たちが健康で日々少しでもストレスなく過ごせる場所であるよう、
これから円山動物園が変わっていってくれることを願ってやみません。
当会も以下の内容の意見書を札幌市秋元市長、円山動物園に提出させていただきます。
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円山動物園の動物の飼育管理体制についての意見
高齢のメスのマレーグマが、若いオスの個体と同居させたことにより死亡した件について
こういった基準があることはすでにご存じと思いますが、
環境省告示「展示動物の飼養及び保管に関する基準」の以下の4点の部分に
違反していると考えられ、飼養者の判断能力に問題があったことは否めません。
第1 一般原則
1 基本的な考え方
管理者及び飼養保管者は、動物が命あるものであることにかんがみ、
展示動物の生態、習性及び生理並びに飼養及び保管の環境に配慮しつつ、
愛情と責任をもって適正に飼養及び保管するとともに、
展示動物にとって豊かな飼養及び保管の環境の構築に努めること。
3 計画的な繁殖等
管理者は、みだりに繁殖させることにより展示動物の適正な飼養及び保管等に支障
が生じないよう、自己の管理する施設の収容力、展示動物の年齢、健康状態等を勘案し、
計画的な繁殖を行うように努めること。
第3 共通基準
1 動物の健康及び安全の保持
イ 動物の疾病及び負傷の予防等日常の健康管理に努めるとともに、疾病にかかり、
若しくは負傷し、又は死亡した動物に対しては、その原因究明を含めて、
獣医師による適切な措置が講じられるようにすること。
また、みだりに、疾病にかかり、又は負傷した動物の適切な保護を行わないことは、
動物の虐待となるおそれがあることを十分認識すること。
キ疾病にかかり、若しくは負傷した動物、妊娠中の若しくは幼齢の動物を育成中の動物又は
高齢の動物については、隔離し、又は治療する等の必要な措置を講ずるとともに、
適切な給餌及び給水を行い、並びに休息を与えること。
今回、いろいろな意味で大切な財産である貴重なマレーグマが
事故により天寿を全うできなかったこと本当に残念でなりません。
過去にも、ヒグマ、シンリンオオカミ、コツメカワウソ、マレーバクも事故死していますが、
動物園の適正飼育と管理体制に疑問を感じざるを得ません。
動物園に来場される方の多くは、動物に癒しを求めたり、
日々懸命に生きる動物達の姿に心励まされることなどを希望や期待をされていると思います。
しかし、実際の動物たちは、動物園という限られた環境の中でストレスもありますし、
それによる予測が難しい事故も起きることも想定されますが、
一連の事故はアジアゾーンのエリアで起きており、
また過去のヒグマやシシリンオオカミの事故死に関しても、
防ぐことが出来た、いわば人災だと思います。
野生動物であることからも、万が一の事故に備え、
念には念を入れる高度な注意義務を負う想像力が足りなく、
管理体制の根本から変えていかなければ同じような事故が起きるのではないでしょうか。
今、円山動物園には、繁殖させたり、新たな動物を飼育することよりも、
現在いる1頭1頭の動物たちの命と向き合い大切にし、丁寧な飼育を心がけ、
各々のQOLを上げていくことが重要だと思います。
1頭1頭が天寿を全うできるよう大切に尊重し扱って欲しいのです。
動物たちの健康と安全な環境を与えることは、
動物園側の責任であるということを自覚していただきたく、
動物園に行くと笑顔になれるような場所であって欲しいと願っています。
それには動物達が健康で日々ストレスなく過ごせる場所でなければいけません。
動物の命を預かる動物園のあるべき姿や存在の意味を
今一度考え直す時が来ているのではないでしょうか。
これからの円山動物園が変わっていってくれることを願ってやみません。