推定10歳以上のメス犬を引き取りました。
今回のレスキューは非情に緊急性が高かったため、
事前のスタッフの作業スケジュール調整がつかず、
引取りに向かうスタッフは、朝の担当作業を終え、
残りの作業を他のスタッフに任せ、大急ぎで岩内保健所に向かいました。

お盆の混雑はありましたが、大きなトラブルもなく岩内保健所に着きました。

この子は8月9日、
岩内郡岩内町字野束の国道229号線沿いの交番前を放浪しているところを保護され、
休日をはさんで11日、岩内保健所に収容されました。
この子が保護された時はまだ雨が残っている天気で、
9日前の1週間は北海道は大雨の悪天候が続いていました。
衰弱した身体でいったい何日放浪したのでしょう。
立ち上げれないほど弱っていた身体と気持ちを奮い立たせ、
生きたい一心で交番の前までたどり着いたのでしょう。
迷子扱いでしたが、当然飼い主が名乗り出ることはなく、
14日の公示期限を迎えました。

前日に岩内保健所の職員の方から上記の写真をいただいていたのですが、
実際に目の当たりにすると、余りの状態の悪さに息をのみました。
ケージの中で丸くなり、辛いのかじっとして動きませんでした。

立たせてみると、自力で立ち、何とか歩くこともできました。

すぐに保健所を後にして病院に向かいました。
車内でも、じっとしたままでした。

病院に着いて診察していただきましたが、あまりの状態の悪さに先生も驚いていました。
天羽(アマネ)と名付けました。
乳腺腫瘍が腹部全体から股間にかけて広範囲に広がっており、
麻酔に耐えられないかもしれないし、
腫瘍が股間の動脈を巻き込んでいたり、
肺に転移していたりすると助からないかもしれないとのこと・・・。
状況はかなり深刻なため入院して翌日、手術することになりました。
助かって欲しい・・・そう願って病院をあとにしました。
そのあと、病院から連絡をいただきましたが、
天羽は手術前のレントゲン撮影で肺への転移が見られ、
陰部にまで腫瘍が広がっていたため手術は中止になりました。
もう何も出来ることはなく、秋までもたないかもしれないそうです・・・。
小さく小さく肢も折れそうなくらい細く、体重は1.75キロしかありませんでした。
混合ワクチンも出来ないほど体力もなく、両目とも視力はありません。
でも耳は聞こえているようでした!

毛の状態が酷いので病院でトリミングしてくださいました。
歯もあり食欲はまだ残っていて、美味しいご馳走なら食べてくれます。
天使のような天羽・・・
これまでどれだけ人間のエゴの犠牲になってきたのでしょうか。
身体の状態からも繁殖犬だったと思われる天羽は、
繁殖出来なくなったと不用になり遺棄されたのでしょう。
たまたま遺棄され運よく発見された一匹に過ぎないのかも知れません・・・。
保健所では安楽死を考えていました。
天羽にとって何が一番なのでしょう・・・
私たちは、天羽自信が命を全うするその瞬間まで、
生かしてあげたいと思うのです。
今後は食べたいものを食べ、穏やかに過ごせる場所で、
天に召される最期は人の温もりを感じ安らかに旅立って欲しいと思うのです。

昨年の9月1日、動物愛護管理法が改正され、
行政が動物取扱業者から引取りを求められた場合の他、
繰返し引取りを求められた場合や
あらかじめ新たな飼い主を探す取り組みをしていない場合、
犬猫の高齢化、病気等の飼養が困難であるとは認められない理由による場合等、
終生飼養の趣旨に反する場合には引取りを拒否できることとされました。
また、自治体は殺処分がなくなることを目指して、
引き取った犬猫をできるだけ返還したり、譲渡するよう努めることが明文化されました。
しかし、法律にそう明記されても、
警察で取り締まり実際に検挙されることもないため、こうした事件は後を絶ちません。
弱い者を慈しみ、思いやりのある社会は人のモラルだけでは成り立たないのでしょう。
罰則がある以上、悪を犯す人間を取り締まるのは当然のことと思います。
天羽がそれを教えてくれているように思うのです。